ロック・ダウンな復活祭と、復活祭のご馳走たち


イエス・キリストが十字架に架けられて亡くなり、

その3日後に復活したのを祝うキリスト教のイベント「復活祭」。
英語でイースター。イタリア語ではパスクワ。


一年でいろいろあるイベントのうちでも、
キリスト教的には一番大事なイベントなんだそうだ。
キリストの誕生日であるクリスマスの方が
世界中でメジャーだから大事なんだと思っていたら、
そうじゃないらしい。


今年は4月4日の日曜日がその復活祭だった。

今年は、というのは毎年ちょっとずつ時期がずれるから。
「春分の日の後の、最初の満月の次の日曜日」ということになっている。


        復活祭といえばコレ! イースターエッグ。これはヘーゼルナッツ界のアンジェロ・ガヤと呼ばれる
            「Papa dei Boschi」の卵。極上ヘーゼルナッツがこれでもか!というほどくっついている。


そんな復活祭を、イタリアでは2年連続
ロック・ダウンで迎えることになるなんて、
いったい誰が予想していただろう。
イタリアは今、第3波の真っ只中で、
ワクチン接種も遅々として進まず、なかなか大変な状況にある。
イタリアにどんなふうに第3波がやってきて、
どんなふうに人々が過ごしているかは先日、
東洋経済オンラインに書いたので、読んでみてください。


コロナのない、普通の状況なら、イタリアの復活祭は
家族親戚一同で集まってご馳走を食べ、楽しい1日を過ごす。

一族のお母さんやおばあちゃんが腕によりをかけてご馳走を作り、
食べろ食べろ攻撃で大変だ、という人も少なくない。

テーブルには無実・潔白のキリストを象徴する子羊(や子ヤギ)、
繁栄のしるしのウサギ(子沢山だから)、
そして復活や命の誕生を象徴する卵を使った料理が並ぶ。


  例えば私はラムチョップが大好きなのだけど、今年は庭のタイムとニンニクを混ぜたパン粉をまぶして焼いてみた。

卵って、チョコでできたやつだけかと思ったら、

ゆで卵にしてゴロゴロ丸ごと入れたりする料理やパンが各地にあって面白い。


    これは友人作「トルタ・パスクワリーナ」。リグーリア州の伝統復活祭料理で、ほうれん草、または春の野草・るりちしゃと
  ゆで卵がゴロゴロ入っている。



カラブリア州在住の澤井英里さんは、

嫁ぎ先の食文化をしっかり継承しようと、

伝統料理をバッチリ作って復活祭を祝っている。
澤井さん作・カラブリア伝統の復活祭のパン「ククロ」。

茹で卵が丸ごと(殻ごと)1個入っているのに注目!


  今年は伝統の形をアレンジして壁掛けタイプにしたそう。アレンジしちゃうなんて、もはやベテランの域だ(写真:澤井英里さん提供)

この卵はどうするのか前から気になっていたので聞いてみたら、
卵(茹で卵)は象徴的なものなのでパンと一緒に食べるわけではなくて、
後でサラダに入れたり、縁起物だから殻も大事にいただくという家庭など、
人により、地方によりそれぞれだそう。


澤井さんのお料理、おいしそうなので

卵パン以外もお見せしちゃおうー。

  肉料理は子ヤギのモモ肉。カラブリア州の復活祭では子羊よりも子ヤギがメジャーなんですって。(写真・上下とも澤井英里さん提供)

  トマトソースで味付けしたご飯の中にグリーンピースや茹で卵、サルシッチャなどなどを詰めてオーブンで焼いた「サルトゥ・ディ・リーゾ」。


お腹いっぱいになったら、デザートには、

これまた象徴シリーズ、鳩の形の復活祭ケーキ「コロンバ」を食べる。

なぜ鳩が平和の象徴かというと、ノアの方舟の物語の中に、

ノアが鳩を飛ばしてや洪水が収まったかどうかを確認するシーンがあって、
洪水が収まった=平和だから、ということだそうだ。


     うーん、鳩の形なの?と苦しい感じはあるけど、パネットーネと同じ生地を天然酵母で焼き上げるおいしい「コロンバ」。


そんなコロンバは、実はそんなに歴史が古いお菓子ではなくて、

コマーシャルの力で(?)全国バーションのお菓子になった。
でもそれとは別に、いや、それも食べるけど、
地方それぞれに昔からある伝統菓子を絶対忘れないで食べまくるのが
イタリアのいいところだ。


例えば「パスティエラ・ナポレターノ」というケーキは、

最近イタリア全国で人気が出始めているという噂だけど、

本来はナポリ地方で復活祭に食べるケーキだ。
リコッタチーズ(ヤギのミルクの)やグラノ・コットという

麦を甘く煮たおかゆのようなもので作るベースに、
「オレンジの花の水」という蒸留水でつけた香りが独特の
とてもおいしいケーキだ。


 これもカラブリアの澤井さん作。カラブリアはナポリ文化の影響が色濃く残っているので、
  このケーキもポピュラーなんだって。


でも、こんな伝統料理たちは、とても手が込んでいて準備に時間がかかる。
澤井さんのようにイタリアの伝統文化を残し伝えていくことをライフワークに
している人は別として、外で仕事をしている人だったら、
金曜日の夜まで会社に行って、日曜日のランチに
ご馳走を準備しろと言われても、なかなかできるもんじゃない。


でも今年はロックダウンで仕事に行っていないから
初めて伝統料理に挑戦しちゃったわ、と

私のナポリ出身の友人は笑っていた。
そんな人がイタリア中にたくさんいたんじゃないかな、と思った。


復活祭の翌日は、イースター・マンデー。


イタリア語では「パスクエッタ(小復活祭)」と呼ばれて、
この日もイタリアは祭日。復活祭のご馳走の残り物(?)を持って
ピクニックへ行くのが伝統だけれど、
最近はバーベキューで盛り上がるイタリア人も増えている。


それにしても、例年、イタリアでは
(というか私の住んでいるピエモンテ州あたりでは)、

いつもいつもパスクエッタは天気が悪いのがお決まりだった。

長い冬が終わって、春がやってきて本当に嬉しいね!と

友達と集まって楽しみたいのに、いつもいつも小雨とか、どんよりとか、

判で押したように天気が悪かった。


ところが! 去年も今年も、とてもいいお天気だったのだ。

なんだか神様が、あんたたち今、ロックダウンでかわいそうだから、
せめてパスクエッタはお天気にしてあげるわね、
って言ってるみたいだね。そんなこと言いながら娘と二人、
ロックダウンな復活祭の二日を過ごした。

陽の当たる庭で、ピクニック気分のランチなんかして。


  るりちしゃと茹で卵、ゴルゴンゾーラ入りのキッシュで。




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