ロックダウン解除へ


ここ掘れワンワンのトリュフ犬

11月13日(金曜日)


昨日からどんよりと霧が沈んで、骨にしみる寒さになって来た。
いつもの年なら、私が暮らす、このピエモンテの晩秋特有のお天気には、
しめしめ、白トリュフが美味しくなってくるねー、

とニヤニヤするところだ。でも今年は、
レストランも営業できないし、自分の住む市町村から出られないから、
トリュフなんか食べに行くことはできない。
気温が下がればウイルスの動きが活発になるというので怖い。


世界で最高品質の白トリュフが食べられる

ピエモンテ州ランゲ地方、アルバの界隈には、

世界中から白トリュフと、バローロやらバルバレスコなどの
ピエモンテワインを目指して押し寄せてくるはずのグルメや

フーディーも今年はいない。
ピエモンテ州のレストランは、一年で一番の稼ぎ時だっていうのに。


          こんなふうに目の前で削ってもらって食べる白トリュフ。今年はお預け。


昨夜のニュースでは、保健相のスペランツァさんが
実効再生数Rtが1.7から1.4に下がって来て、とても明るい兆しです、

でも1以下でなければ感染は減っていかない、と言っていた。

この数字はイタリア全体の数字。

ピエモンテやロンバルディはレッドゾーンだから

もう少し高いのだろうか? 

ロックダウンが決まった時はなんと2を超えていた。

一人が二人にうつして倍々に増えていくという数字。

トスカーナ州(州都フィレンツェ)は、2日前に黄色から
オレンジになったかと思ったら、明日からレッドゾーン。
そして感染状況の酷さが報道され続けながらずっとイエローで、
「政治介入か?」なんていう噂もあったカンパーニャ州
(州都ナポリ)もついにレッドに。

つまりロックダウン状態に入るということ。


11月15日(日曜日)


発酵生地の神様と呼ばれるマウロ・モランディンさんをズームで訪ね、

パネットーネを作るところをライブで見せてもらうイベントをした。

彼はヴァッレ・ダオスタ州のサン・ヴェンサンという小さな街で

お父さんの代から美味しいパネットーネやチョコレートを

作って販売するパスティッチェリア(お菓子屋さん)。

パン屋さんはいいのに、お菓子屋さんは営業停止のロックダウン中だから、

少しでも力になれたらという気持ち。
(対面で販売することはできないけど、彼のお店は

販売してオンラインで販売はできている)


自分だって人のこと助けている場合?
という思いがちらりと頭の隅をよぎる。

イタリアの素敵な場所や美味しいお店を取材して書くという

私の仕事は、立派な観光業だったんだなあ、と今になってわかった。
日本の人がイタリアに遊びに来ることができない今、

私が書く予定になっていた日本の雑誌のイタリア特集は
みんなボツになった。


昨日のコンテ首相、今日のスペランツァ保健相が続けざまに、
クリスマスは期待するな、という趣旨の発言。

イタリアの人たちはみんなロックダウンを我慢して

結構真面目に規制を守って、クリスマスのために頑張ったのにね。

「第3波あってはならない」ということ。本当にその通りだけど。


イエローゾーンの人たちは、外出は禁止されていない。
飲食店も営業できるけど、朝の5時から18時までと限られている。

普段のイタリアでは、レストランの夕食開始はだいたい20時からだから、
アペリティーボ(食前の軽いおつまみとお酒の習慣)を6時ごろからして楽しむ。

その時間帯が早まったと言って、それを皮肉る動画や投稿が目につく。

18時までに夕食を食べ終わるためには、アペリティーボもランチも

前倒しに早くなるというわけ。

「あ! 10時だ。お昼ご飯食べなくちゃ!」みたいな。


11月19日(木曜日)


「感染が下がってもクリスマスや年末のパーティーはなし」と
コンテ首相がコメントした。


  アオスタのスキーリゾート、クールマイヨールの街で見たクリスマスツリー。


12月25日はキリストが生まれた日だから、

普通なら24日の24時に教会のミサへ行ってキリストの誕生を祝ったり、

というのは敬虔な信者の人たちの話で、

そうでもない普通のイタリア人たちは、
夜更かしして25日になった途端にBuona Natale! 

メリー・クリスマス!と乾杯したりする。

データ上では国民の80%がカソリック教徒ということだけど、

真面目に日曜日に教会へ行ったりするのは、

どれぐらいなんだろう?

北イタリアと南イタリアではちょっと違うかもしれなくて

(南の方が敬虔と言われている)

私がトリノで見ている感じだと、

教会へ行くのはほとんどがお年寄りばっかりだ。


それで25日、クリスマス本番の朝は少し朝寝坊して、

家族で集まってお昼からご馳走を食べる。
ちょっと昔の日本のお正月のように、家族や親戚で集まる。
だからイタリアのクリスマスは、日本のように

恋人同士のロマンチックなイベントではなくて、

家族の絆を確かめ合う? イベントなのだ。
恋人同士は、それぞれの家族の家で別々に祝う。

婚約中とか新婚カップルは、どっちの家族の方へ行くかで

もめたりするなんて話も聞いた。


そして31日は、若者も老人も、それぞれ集まって

カウントダウンのパーティーをする。

花火や爆竹を鳴らして大騒ぎする。

ドレスアップして大晦日の特別ディナーに行くか、
ディスコで盛り上がるなどして24時を迎える。


そういうのが今年は全部ダメ、ということ。

クリスマスランチはしても、大家族で集まるのはダメ、

抱き合ったりキスしあったりはダメ、と首相は強調する。
分別を持って行動すべきです。もしもこの1週間、
特例を作って緩んで羽目を外せば、
1月に大きなツケを払わうことになります。
つまり感染カーブがまた右肩上がりに上昇して、死者数も増える。

第3波は絶対にあってはならないのです。


経済を盛り立てるために、プレゼントの交換はぜひ、ということだ。


11月23日(月曜日)


知人の弟さんが、もう18日間もチューブに繋がれて

治療に反応しないのだという知らせ。

どうか、回復しますように。


先日読んだニュースは、ミラノで、コロナ禍で食べるのに困っている人たちに

無料でパンを提供していた街のパン屋さんが、
コロナにかかって亡くなったという話。
気を遣わせるといけないからと、本当は焼きたてなのに、
残り物だといって渡していたのだそう。



11月25日(水曜日)


カラブリアでは重症化した人が何日も病院には入れずに

大変だというニュース。

北部では最近、医療崩壊を防ぎ、家庭内感染を防ぐために

日本みたいなコロナホテルを作っているけど、ここには

そんなものないから、医療チームが車に乗って各家を回り

入院できない人たちの治療にあたっているのだと

インタビューされた医療チームの一人。

人手が足りないから、長時間労働でヘトヘトだって。


南北の医療格差は北イタリアに住む私が想像する以上に深刻そうだ。



11月26日(木曜日)


大学生ぐらいの年齢の人たちの、コロナ関連ボランティアが
とても増えているとテレビで言っている。

偉いなあ、最近の若者は、と思って見ていると、

彼らのほとんど、大切な人をコロナで失う体験をしているのだという。

「僕はおばあちゃんを助けられなかったら、せめて他の誰かを助けたい」と

救急車を運転する青年の言葉。


4月にコロナにかかり、陰性になっても後遺症がずっと治らないという
20代の女の子。毎日高熱が続き、集中力も出ないから、
大学へ行くのなんて無理だという。

かわいそうに、毎日何ヶ月も38度の熱があるなんて。

自分は若いから、感染したとしても死なないからいいや、

と思うのは本当に間違いだとゾッとする。


東洋経済オンラインの記事を書くために、
コロナによって増えた貧困状況を調べてみる。
わかってはいたけれど、本当に大変なことになっている。
もうすぐロックダウンは終了して、経済活動は再開するだろうけれど、
今年のクリスマス、400万人の人がクリスマスに
食べる物がないという予想だそうだ。

でも市場の売れ残りを無料で配布したり、

休業中のシェフたちが料理を作ったりと、
たくさんの人たちが、助け合いをしているという。

いろいろなことがダメな国だけど、

いい国だなあ、イタリアは、と思う。





11月29日(日曜日)


感染状況が随分改善したピエモンテ州、ロンバルディア州、カラブリア州は、

レッドゾーンからオレンジゾーンに格上げ(?)になり、

今日から外出禁止は夜22時から5時だけになる。

とはいえ、イエローゾーンになるまでは、

自分の住む市町村以外は行けないし、

レストランもバールも営業できないので、

あまり変わらない。外出理由を書き込んだ

自己申告書を持っていなくてもよくなるのは

随分気楽ではあるけれど。



12月2日(水曜日)


12月21日から1月6日は、クリスマス休暇の混乱、
感染の再拡大を避けるため、州と州との間の移動禁止、と発表された。
たくさんのイタリア人が仕事や学業で

家族、親戚と離れて州外に暮らしている、

そんな人たちが一緒にクリスマスを祝えない。


スキー場も年明けまでクローズが決定された。

スキー場そのものの売り上げだけじゃなく、

ホテル、レストラン、お土産物屋さんなどなど、
山間部の市町村では、年間の収益の40%が失われるということ。

学生時代にちょこっとスキーをしていた私は、

トリノに住んでから毎冬、マッターホルンや

モンブランの近くでスキーができるのが嬉しくて仕方がなかったけど、

今年の冬休みはそれができない。


ちょっと前に、弟が重症でと言っていた
知人のFB投稿が目に飛び込んできた。

はっきり書いていないけど、亡くなってしまったみたい。

弟さんには会ったこともないけど、

もう10ヶ月もコロナコロナで暮らしているけど、

こんなに身近に、本当にコロナで亡くなった人は始めてだ。








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