コロナよ、日本に帰りたいよ。



3月4月のイタリアは、コロナウイルスの感染拡大がものすごくて、
先日の日経新聞も書いていたけれど、まさに「地獄」の日々だった。

実際には、ロックダウン中で家の中にいる限り安全だから

(そして家の中にいることしかできなかったので)

地獄を体験しているというよりも

地獄を間近に見ている、でもそれはいつ、

実体験に変わるかわからない、そんな恐ろしさのある日々だった。


毎日夕方6時になると、市民保護局長が記者会見をして、

その日のデータを発表していた。

毎日毎日休みなく定時に記者会見して、

お疲れだろうな、免疫力下がってコロナに感染しないといいけど、

と思っていたら、3月の後半に発熱のため自主隔離、という発表があった。

でも検査をしたら陰性ということだった。


新規感染者数も犠牲になった人の数もうなぎ上りで、

3月19日には死者数を、3月27日には総感染者数で中国を追い抜き

残念な世界一になってしまった。

あの頃はイタリアの前を走っていたのは

中国だけだったんだから。

その3月27日の死者数はなんと969人で、

アイホンの画面を見ながら、「もうやめてよー」と

思わずつぶやいた。

だからあの頃は、毎日、6時のニュースを見るのが怖かった。


さいわい、毎日の犠牲者数は1000人を超えることはなく、

少しずつ減少の方向へ向かって行った。


5月にロックダウンが解除後は、感染が低く抑えられるようになって、

いつもよりは控えめながらバカンスも過ごしたりして、

そんな怖さを少しずつ、忘れかけていた。

コロナの存在は相変わらずあって、マスクを持っていないと

レストランやお店などには入れないし、

ニュースでは相変わらず、コロナ関連が圧倒的に多いけど、

この前はスーパーのレジで間を詰めて並んでしまって、

前の人にふり向かれたりして。


         バールでのお茶をするときも、必ずマスク着用、ソーシャルディスタンスで窮屈だ。


ところが最近、6時のニュースが気になる日々が、また復活している。

夏のバカンスの影響が出ているのか、

毎日の感染者数が少しづつ増えて、

8月26日には1,000人代を突破してしまった。

同じ日のフランスではなんと5,429人で、

イタリアもどんどん増えていくに違いない、と

みんな緊張したけれど、意外と数字は伸びて行かず、

1,500人前後を推移していた。



9月


6月7月は1日の感染者数が100人台の日もあったりして、
バカンスも意外と大丈夫そうと人々は思い始めた。

それで8月にはたくさんの人が海や山へ出かけた。

人混みが多そうなビーチよりも山が人気という予想もあったけど

(実際そうではあったんだけど)、

やっぱり海を諦められないイタリア人たちが

大勢、ビーチでバカンスを過ごした。

イタリア人は夏の夜遊び、夜歩きが大好きで、

若者たちは夜はディスコで盛り上がりまくった。

イタリアの若者たちがどんなふうに盛り上がって

感染が再び増えていったかは、東洋経済onlineに

書かせてもらったので、そちらも読んでみてください。



9月6日


毎年8月に1ヶ月行っている海辺の小さな町に、

一週間だけ、娘と、ラブラドールのグレースを連れて行ってみた。

まだ暑くて、それでいて人は少なめだからとても気持ちがいい。

顔なじみの地元商店の人たちはみんな

「今年の8月はいつもよりも観光客が多かった。

でも1ヶ月過ごす常連客ではなくて

一週間とか10日とか滞在して帰っていく人たちが

入れ替わり立ち替わりで、とても忙しかった」

と口を揃えて言っていた。

どうやらコロナの影響で予算が少なめな人、

ロックダウンで休みすぎたので夏休みが短めになっている企業も多いこと、

出かけるのは怖いと思っている人、

その3つが関係しているらしい。




私が8月に海へ行かなかったのも似たような理由で、

例年なら貸別荘の予約を入れる3月はバカンスのことなんてとても考えられなかったこと、

夫はレストラン業、私の仕事だってイタリアの観光や食について

日本の雑誌に書くことだから、コロナの経済的打撃を結構受けていて、

今年はそんな贅沢は諦めましょうよムードだったこと。

そして本当にバカンスなんて行けるんだろうか?と

ぼやぼや考えていたらあっという間に夏になってしまった。

そんな感じなのだった。


         人の少ない静かな海を満喫したグレース


9月15日


イタリア中が固唾を飲んで見守っていた学校が再開した。

3月の中旬からずっと休校になって、

そのまま6月の夏休みに突入し、そして

6ヶ月経った今、ついに再開したのだ。

新聞でもテレビでもネットでも、再開するための対策や

懸念される感染拡大について、様々な意見が飛び交っている。

学校がちゃんとある、機能していることは、

真っ当な国として、子供達の将来のため、

つまりは国の未来のためにも、とても大切なことだ。
でも大勢の子供、学生、付き添う親たちが一斉に街に出て、

バスに乗ったり、バールでランチを食べたりしたら

どうなるんだろうと、みんなが注目している。


          トリノの中心街を走る市街電車(トラム)



友達のティツィアーナは高校2年生になる娘を

「絶対バスには乗らせたくない」と言って、毎日送り迎えするそうだ。

そういう親が多いのだろう、午後に娘が通っていた高校の前を通りかかったら、

ものすごい数の車が二重駐車をして子供が出てくるのを待っていた。

普通だったら高校生だから、親が迎えに行くことなんてないのに。


朝も8時にグレースの散歩に行こうと車を出したら、

ものすごい渋滞になっていた。

そういえばロックダウンで空気が綺麗になったって

言っていたのに、もうそんな話ははるか昔のことみたいだ。


9月30日


コンテ首相が緊急事態宣言を、来年の1月31日まで延長するという報道があった。

ちょうど一年前のその日、最初の緊急事態宣言が発令されたんだそうだ。

もう一年。

友達のお嬢さんは、学校が再開して

「学校の嫌な部分だけが残った」とぶーたれているそうだ。

つまり、毎朝通わなくてはいけないし、勉強はあるけれど、

休み時間に立ち上がって友達の席へ行ったり、

他のクラスへ遊びに行くことは禁じられているそうだ。

学校の入口と出口は分けられているし、

階段も一方通行になっている。

勉強するだけで、友達と過ごす学校の楽しい部分が

消えてしまったんだそうだ。


               トリノの私立高校。ソーシャルディスタンスが厳しく守られているから、

               ヒソヒソおしゃべりしたり、ふざけっこもできないね。



10月2日


今も毎日、夕方の6時前後に、新規感染者数、死者数、回復者数、

検査数が発表される。

薄暗くなって、そろそろ夕ご飯を作ろうかな、という時に、

そうだ、スマホ、と思って立ち上げる時に少し、緊張する。

今日は2,000人を超えてしまったじゃんないか??

死者数がいきなり100人とかになっていないか?


8月の後半から、フランスやイギリス、ドイツなど

ヨーロッパの他の国では再度の感染拡大が激しくなっていたのに、

イタリアはずっと1,500人前後で頑張っていた。

もちろん、6月ごろの200人、300人なんていうのに比べたら、

徐々に増えてきてはいるのだが、

フランスは1日で1万6,000人なんて言って

来週にも再度ロックダウンに突入かもしれないそうだ。

だからイタリアは優等生だっていう記事

イタリアがコロナ優等生になった本当のワケ

を、ニューズウィークにアップした途端、

2500人に急増してしまった。


寒くなったら、また感染は拡大するだろうと

言われているイタリアで暮らす私は、

いったい、いつになったら里帰りできるんだろう。

普段なら年に一度か二度行っていた日本。

去年はお正月に帰れなかったから

チケットが安くなる2月ごろ帰ろうかと思っていたら

いきなりコロナでロックダウンが始まった。

そしてあっという間に1年が経とうとしている。


アリタリアも飛ばないし、飛んだとしても行って14日、

戻ってきて14日の隔離がある限り、

日本へ里帰りするのは現実的じゃない。

仕事はホテルでもできるけど、
子供や犬猫をほっぽって隔離だけで1ヶ月はありえない。


市場でおいしそうなカブが売っていたから

買ってきて、何を作ろうか考えていた。

そういえば去年の冬、東京の実家で、

正月料理で残ったカブの葉っぱと油揚げを煮付けたら、
高齢の母がとても喜んでムシャムシャ食べていたのを

ふと思い出した。


また作ってあげたいのになあ。




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