ロックダウンとジャムの味、そしてイタリアのコロナな夏




毎朝、この季節であれば7時頃に起きだして、

車で15分ほどの大きな公園にグレースを連れて散歩に行く。

ほんとうは遅寝遅起きタイプの私だけど、

8時を過ぎると気温が高くなって、

グレースにとっては暑過ぎるからしかたなく頑張っている。

グレースはとても優しい目をしたラブラドール・レトリバー、

7歳のお嬢さんだ。


今朝は時間がなくて、その公園ではなくて家の近所を散歩していると、

一軒の家から年配の男性が走り出てきた。

私と一緒に立ち止まったグレースは、

ちぎれんばかりに尻尾を振っている。

よく見るとロックダウン中にこの辺を散歩していて、

何度も会ったおじいさんだ。


ロックダウン中は犬の散歩も自宅から200m圏内と規制された上に、

公園も閉鎖になっていから、毎日家の近所を歩くしかなかった。

そんな日々に、ほぼ毎日すれ違い、挨拶を交わし、

グレースを可愛がってくれた人だった。


  ロックダウン中よく歩いた家の近所の散歩道。


「グレース!おいで!! 久しぶりだねえ」と

目を細くするおじいさん。そして私に

「こんな格好でごめんね、シャワーを浴びたばっかりで」と

上半身裸なのを謝る。私とグレースが通りかかるのを見て、

慌てて飛び出してきたんだろう。

ロックダウンが解除され、レストランや商店が営業再開するよりも

まず先に公園の閉鎖が解除になった5月4日以来、

近所の散歩はたまにしかしていないから、

2ヶ月以上ぶりに見かけたグレースだったというわけだ。


「ちょっと待ってて」と言って家の中に戻ったおじいさんは、

庭の木にたくさんなりすぎたんだと言って、

カゴいっぱいの生のプルーンをくれた。

そして、くしゃくしゃにグレースの頭をなぜた後、

またね、グレース、と言って家の中に入って行った。


まだ散歩の行きがけだった私は、

カゴいっぱいのプルーンを片手に持って(結構これが重い!)

小一時間ほど歩く羽目になった。

ニンジンやかぼちゃやブロッコリーや、

バナナやみかんも喜んで食べるグレースだから、

よく熟れて甘そうなプルーンを一つ、種を取ってあげてみたけれど、

匂いを嗅いだだけで顔を背けた。

ごめんね、おじいさん、と一人苦笑いしながら歩いた。


家について、熟れ熟れのプルーンでジャムを作った。

グツグツ煮える甘い香りを嗅ぎながら、

辛く厳しいロックダウンのおかげでできた、

こんなご近所づきあいも悪くないな、と思った。


  街で見かけたメガネショップのショーウィンドウ。マスクとコーディネートするところは、さすが遊び好きのイタリア人。


そんなイタリアでは今、ほぼコロナ以前と

同じような暮らしが戻っている。

買い物も外出も自由にできるし、

海外旅行だってEU圏内であれば自由に行ける。


ただし、お店やレストラン、公共交通機関を利用する時は

マスクの着用が義務で、暑い日はちょっと大変だ。

買い物に行ったのにマスクを忘れたら、

お店に入れてもらえない。


飲食店内では、テーブル同士の距離は広く開けてあるけれど、

同じテーブルの友達や家族同士の距離は今まで通り。

入店する前にマスクをつけ、席に着いたら外していい。

でもトイレや支払いに立ち上がるときは、再度マスクをつける。

もちろんお店のスタッフは、シェフもサービスも全員マスク着用だ。


  エミリア・ロマーニャ州モデナで見つけた、おしゃれなコーヒーハウス「MENOMOKA」でも、スタッフは全員マスク着用だった。


先日乗ったイタリアの新幹線「フレッチャ・ロッサ」では、

2席で一列の席が一席おきにしか座れないようになっていた。

普段であれば混んでいると荷物を膝に乗せなきゃいけなくて

暑苦しいのだが、コロナのおかげで楽チン。

コロナ禍が始まってからいつもバッグに入れている、除菌ティッシュで

肘掛とテーブルを拭いてから座る。

発車するとすぐに車内販売のようなカートを押したスタッフがやってきて、

紙袋に入ったマスク、消毒ジェル、使い捨て手袋、ヘッドレスト用カバー、

缶入りの水と紙コップのウエルカムキットを配ってくれた。

なかなか気が利いてるし清潔だし、

電車での旅行は安心してできそうだ。


       フレッチャ・ロッサのウエルカムキット


イタリア人の夏休みといえば、

夕涼みを兼ねた夜遊び、そして海へ山へのバカンス。

夜遊びは若者だけでなく、年齢が上の人たちも

夕食後カクテルを飲みに集まったりするのがいつもの夏だ。

でも今年は、年齢の高い人たちの姿は見かけない。


一方で、トリノの中心街の、若者たちに人気のお店が多く

集まるあたりはものすごい人出で、

先週末、車で通りかかった私は、

思わず窓を閉めたほど。

「コロナウイルスが入ってきそう!」

反射的にそう思ってしまったのだ。


ロックダウンが解除された直後は、

今年の海はパラソル同士の間隔を5メートルあけ、

水に入るのも時間予約制で、などと議論されていて、

そんなんじゃ行きたくないよねーと笑っていた海も、

2ヶ月経った今では、コロナのことなんか遠い過去だとでもいうように、

例年通りギュウギュウに混み合っている。


  リグーリア州の人気ビーチリゾート Alassioアラッシオ


最近ではニュースアプリを立ち上げても、

もうコロナ関連の報道は、探さなければ見つからない。

でもそんな目立たないニュースの中にある、

アメリカ、ブラジル、オーストラリアやスペインなど、

世界の感染が収まらない状況や、

イタリアでも感染者数が増えたり減ったりという、

完全に収束したとはいえないデータが不気味だ。

ビーチで重なり合うように日焼けを楽しんでいる人たちは、

そんなニュースは気にしていないんだろうか?

それとも必ず来る、という人も少なくない第二波に備えて、

今だけ遊んでおこうというつもりなんだろうか?



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