フェーズ2な暮らし。続・コロナウィルス6





ロックダウンの段階的な解除が始まって
1週間が経った。
ミラノでも、トリノでも、人出が多すぎるから、
場所によって部分的に再度閉鎖も検討、というニュース。
毎日公園に行けるようになって楽しい気分ががっくり沈む。
いい子にしていないと、
またコロナがやってきますよ、と
脅かしているだけだと思いたい。

5月4日(月曜日)

「ロックダウン解除なのですね! 
よかったですね。日本は延長になってしまいました。泣」
というようなメッセージを友人知人からいただくのだけど、
解除と言っても、今のイタリアよりも、
自粛中でも今の東京の方がずっと自由。

解除になったのは、前回も書いたとおり、
製造業や建設業など一部の職業のみ。
お店は相変わらず食料品店、薬局、タバコ屋、
雑誌スタンドなどしか営業していない。
ただし感染状況を見て、州ごとに判断し、違う対応をしている。
地域によっては文房具屋、書店なども営業していたり、
うちの近所でも花屋さんが開いているのを見かけた。
飲食店は今までデリバリーだけだったのが、
テイクアウトもオッケーになったけど、
感染状況があまり改善していないトリノでは
やっぱりデリバリーしかだめ。
(その後追加でオッケーになった)。
美容院もレストランもショッピングも、
まだまだしばらくお預け。

美容院や歯科医はかなり近くで接触するので、
営業再開の前にPCR検査をして陰性が
確認できたら再開、ということだ。

でも、今までは自宅から200mの範囲しか
外出できなかったのが、公園に出かけてジョギングをしたり、
犬の散歩はしていいことになった。

 公園のベンチの老夫婦(?) お行儀よくマスクをして、距離を開けている。

私も、家から車で10分ほどのところの大きな公園に
車でグレースと出かけるために、
昨夜のうちにシートカバーやタオル、
スニーカーや軍手を用意した。
コロナ以前は毎日出かけていたから
車に乗せっぱなしだった
それらの散歩アイテムを、
私は、まるでどこか旅行に出かけるみたいに
ウキウキした気分で揃えた。
そこに自己申告書とマスクを加えないといけないところが
気分をシラけさせるんだけど、
まあ、それはあまり考えないことにして。

さて、朝。着替えて準備をしたら、ドアを開ける。
ただ公園に出かけることが、こんなに気持ちのいいことだなんて。

         約2ヶ月ぶりのいつもの公園で、グレースも嬉しそうにどんどん走って行っちゃった。

公園に着くと、草がボーボーに、膝ぐらいの高さまで茂っていた。
2ヶ月近く、誰も来ていないのだから当たり前だ。
向こうから、仲良しのさゆりさんがやってきた。
グレースの友達、秋田犬の女の子だ。
犬だって、2ヶ月ぶりに友達に会えて
どうみても嬉しい、という顔をしている。

嬉しそうなグレースと、秋田犬で親友のさゆりさん(下






















犬たちと歩いて行くと、
たくさんの人にすれ違う。みんなマスクをして、
距離をとって歩いているけれど
どう見ても家族ではないし、恋人でもない人たちが、
5月の太陽を浴びて一緒に歩いている。
(ロックダウン解除の条件として、
家族、親戚、恋人のみ各自の家を
訪ねてよい、ということになっている)


広大な公園のあちこちに
警察の車が何台も止まっていて、
みんなが近寄りすぎていないか、
ちゃんとマスクをしているか、
コントロールしている。
でも、彼らも公園で陽を浴びて
なんだか楽しげだ。
尻尾を振って愛想を振りまくグレースに
チャオ!カーネ!(ワンコ!)
なんて言っている。

5月6日(水曜日)

私の誕生日に
トリノで一番お気に入りの老舗オステリア
「アンティケ・セーレ」の夕食デリバリーを頼む。
もう何年も通って友達になったオーナーのアントネッラ。
1ヶ月ほど前に電話をした時は、デリバリーはしないと言い、
「まあ、こんな時だからゆっくり休むわ」と
比較的のんびりと明るい声で喋っていた。
なんだ、イタリアの飲食業界は
意外と大丈夫なのかな?と思ったのだったが、
最近になって、デリバリーサービスを始めた。
ロックダウンが長引けば
比較的体力のある店だって
影響は重くのしかかってくる。

     アンティパストが美味しい「アンティケセーレ」のメニューの中でも、特に美味しい「トミーノ・
        エレットリチ」(手前)。地元のフレッシュチーズにパセリベースのピリ辛ソースをかけた伝統料理。

「デリバリーを始めて、
待ってもらっていた支払いが少しできたわ」。
マスク、手袋姿の彼女から料理の入った袋を
手渡され、庭先で少し立ち話。
家賃や光熱費はもちろん、
人件費、ワインや飲み物の仕入れなどなど、
飲食店を維持していくには、
素人が思う以上に様々な経費がかかるんだろうな。

政府は6月から全イタリアでレストランも営業を再開と言っているけど、
再開しても、今までの半分しか
お客さんを入れることはできないし(ソーシャル・ディスタンスのため)、
再開してしまったら政府の援助などが
終了してしまうから、厳しいのはこれからだわ、と
表情が少し翳る。
お客さんが前と同じように戻ってくるとも限らないし、と。

                 これも前菜の一つ。地元名産のパプリカを焼いただけのもの。驚くほどふっくら肉厚で、つるりと甘い。

そういえばイタリアの経済新聞「il sole 24 ore」の4月20日の記事に
「ストランや商店経営者には、政府から最高25,000ユーロ(約290万円)の
貸付があるが、返せるあてがないから、あまり助けにはならないと
絶望する経営者は多い。イタリア全体で300億ユーロの経済損失で、
約5万件の倒産、30万人の失業者が見込まれる」
という記事があったっけ。

今日は死者369名、また少し増えてしまった。
でも感染者数は毎日減少傾向で、
回復者数も増えている


5月8日(金曜日)

最近イタリアでは「Chi puo' metta, chi no può prenda!」
という小さな運動が起きている。
「可能な人は置いて、無理な人は持って行って」
というような意味。
街角や、スーパーマーケットの隅に箱があって、
何か食べ物を置く人ともらって行く人と。
そんな動き。

      私の家の近くの、教会前に置かれた箱

自営業やフリーランスなど収入を失った人への政府の援助は、
4月は600ユーロ、5月は800ユーロということだけど、
それだけでは食べて行くのはなかなか厳しいし、
かなり高額な年金を納めていないと受給資格がないから、
該当しない人もたくさんいる。

コロナウイルスの感染が始まって、ロックダウン、
首都封鎖された時、その真っ只中に暮らしていた
私も含めみんなが、
「まるで映画の中の話のようだ」と思った。
こんなことが現実に起こるなんて、と。

今思うと、映画の中のような話だったから、
みんな無我夢中で頑張ってこられたのではないか。
人と接するのが大好き、外で騒ぐのが大好きな
イタリア人たちも、大きなコロナ禍の渦の中で
わーっとロックダウンな暮らしを過ごしてきた。

でも今、その渦が収束に向かい、
これから厳しい現実がやってくるのかもしれない。

      スーパーのレジ近くに置かれたカートに、余分に買ったものを入れ、必要な人にとってもらうシステム。


5月10日(日曜日)

アイフォンのニュースアラートが鳴った。
ボランティア活動のためにケニアへ行って誘拐され、
1年半拘束されていたイタリア人女性が
解放されたというニュース。
コロナウィルス以外のニュースがトップで入ってきたのは
いったい、いつ以来だろう?
到着したローマの空港にはコンテ首相も出迎えて
彼女の地元、ミラノの人たちは
涙を流して無事の帰国を喜んでいる。

でもSNSでは、「彼女のために、政府は身代金を
いくら払ったんだ??」という否定的な意見も。
彼女が何を目指してケニアへ行ったのか
本当のところはよくわからないが、
コロナウィルスと経済の疲弊は、
イタリア人の優しい、
助け合いの心までも蝕んでしまうのだなあ、という印象。

感染者がほぼいなくなった北東部の特別自治区
トレンティーノ=アルト・アディジェ州では
11日からレストランやバールも営業を再開。
海のある地域では、
早くも海水浴を楽しむ人たちの姿も
テレビから流れてくる。
海へ行くのは、いわば公園でジョギングするのと同じ
カテゴリーとして許可されている。
でもそれは、自分の住む地域に海がある、という前提だ。
だから海のない州に住むトリノの私たちは
今年は海は無理かなー、と、少し諦め気分。

 トレンティーノ=アルト・アディジェ州ボルツァーノ近郊の村

それにしても、車が増えている。
私自身、毎日グレースを公園に連れて行き、
買い物に行く回数も増えて、
その度に車で出かけている。
せっかく空気が綺麗になったと言っているのに、
工場が止まってCO2排出が減ったと言っているのに、
なんの反省もなく前と全く同じ暮らしに戻ってしまうなら、
人間はあまりにもおバカなのではないか?

そういえばマスクや使い捨ての手袋が
海に流れ着いて新たな公害問題が起きているという。
でもそんなニュース聞くまでもなく、
外出するたびに外科用マスクを使い、使い捨て手袋を使い、
破棄しているんだもん、どれだけゴミが増えているか
想像がつく。
せめてもの抵抗で、私は買い物から帰ったら
手袋をしたまま手洗いを徹底的にして、
その手袋を日に干すことにした。
何回か使ったら穴が空くだろうけど、
私の捨てる量が二分の1になるのなら、
世界中のゴミが二分の1にできるということ?


車といえば、公共交通機関が輸送量が半分になってしまうから
(これもやっぱりソーシャル・ディスタンスのため)
その分、自転車で安心して街を走れるように
トリノの側道は時速20キロに制限されるという
知らせが市から入る。
そして自転車を買う人には補助が出るんだそうだ。
うーん、今の季節はいいけれど、
秋以降寒くなったり、雨が降ったらどうするんだろう?
そんなお金を使うより、バスの本数を増やしたらどうなの?
という声も聞こえてくる。
いや、自転車専用車線を早く整備するべきだ、とか。


18日からはいよいよ、お店、ヘアサロン、
そしてレストランなども再開する。
当初は、レストランや美容院は6月1日までクローズ、と
言っていたけど、二転三転して
州の責任で、それぞれの状況によって決定を出す、
ということになったらしい。

      髪を切って、お茶やアペリもできる、トリノのヘアサロンカフェ。彼らはどうしているかな。

一方、映画館、ミュージアム、劇場、コンサート、ジムなど
大勢の人が集まるような設備は、まだ開けられない。

それで、トリノではこの夏「ドライブ・イン・シアター」が
計画されるというニュース。
スローフードの世界大会を始め、大きな見本市の会場である
「リンゴット」の駐車場で、自分の車の中から
映画を見ようという企画。
60年代の映画の世界のようでワクワクする。
映画館は怖いという逆境をポジティブに転化する
素敵な企画だと思う。
そして秋から冬には、映画館が再開できることを祈って。


ICU患者数28日連続減少
死者数合計が3万人を超えてしまったが、一日で165名は3月9日以来の少なさ。
新規感染者数802名はピーク時の4分の1、3月6日以来の少なさ。













コメント

  1. 日本でも緊急事態宣言が解除され始め、イタリアの統計でもかなり良い方向に向かっているのが見える中、こちらのブログはどうしているかな、と久しぶりに伺いに。

    グレースさんたちワンちゃんと散歩に行った時の一文は、とても嬉しそうで読んでいるとこちらも気分が明るくなれました。

    もちろん、まだすべてが解決したと言うには遠く、経済問題など大きな課題もあるようですが。ただ、初期の頃の本当に絶望的な雰囲気から、今のイタリアには「ああ、行ってみたいなぁ!」と思える本来の魅力が少しづつ取り戻されてきているのを感じました。

    筆者さんとイタリアが明るく陽気な世界を取り戻せるのを、私も楽しみに待たせていただきたいと思います!

    返信削除
    返信
    1. マルさん、こんにちは。ありがとうございます。

      今は買い物に行っても、食べ物以外のものも自由に買えて、そんな些細なこともとても嬉しいなあ、こういう気持ちを忘れないようにしたいなあ、なんて思うこの頃です。

      日本ももう少しで完全解除でしょうか? お元気でお過ごしください。そしていつか明るく楽しく美しいイタリアに遊びにいらしてくださいね。これからはイタリアの魅力を書いていこうと思います。

      削除

コメントを投稿

人気の投稿