アカシアのフリットはニセモノ? 



この間、アカシアの花の天ぷらをインスタにアップしたら、
へー! 美味しそう!などなどのコメントの中に、
「棘があるけど食べられるんですね?」というコメントをいただいた。
私は食べることだけに気を取られていて、
アカシアの花がどうなっているかなんて
あまり気に留めていなくて反省。
ちょっと調べてみたらいろいろなことが出てきた。

私が初めてアカシアの花のフリット(イタリアの揚げ物)を食べたのは、
もう20年近く前の話。私が住むピエモンテ州の、
プリオッカ・ダルバPriocca d'Albaという村にあるレストラン
「イル・チェントロIl Centro」でのことだった。



厨房を預かるのは、女性シェフのエリデさん。
料理なんか全く好きじゃなかったのに、
お嫁に来てみたら家業は村の食堂。
仕方なくお姑さんを手伝っているうちに腕を上げ、
ついにはミシュランの一つ星を獲得したという
スゴ腕の彼女が作るアカシアの花のフリットは、
甘い香りが衣にふんわりと包まれ、
微かな塩味と、ほんの少しだけ添えてある
アカシアのハチミツの甘さが口の中でまざり合い、
それはそれは鮮烈に美味しかったのを想い出す。

残念ながらその時の写真はないんだけど、
これはエリデシェフ自慢のタヤリン。

                      エリデ・シェフ手製の、ピエモンテ郷土パスタ「タヤリン」。
         超極細なのにコシがあって、あっさり系ミートソースによく合う

その時から、また食べたいと思いながらも、
春先にアカシアの花が咲く時期は短くて、
後にも先にもエリデのアカシアを食べたのはその時一回きり。

      「イル・チェントロ」自慢の自家製フルーツのシロップ漬け。
          これを食べるためにだけでも行きたくなるほどおいしい。

そして7年前、私は引越しをした。
トリノの中心街から森の中の一軒家に移ったのはその年の秋で、
次の春、家の近所にアカシヤらしき花があちこちに
咲いているのを見て、フリット作れるじゃん!と
興奮したのだった。

      うちの近所に生えている巨大なニセアカシアの木

作ってみようと思ってネットで検索すると
イタリア語のレシピはたくさんヒットする。
ポピュラーとは言えないまでも、
イタリアでは比較的よく知られた料理なのかも。
日常的に食べないのは、
どこにでも木があるわけでないし、
花が咲くのは一年の10日間ぐらいのものだからかな。
山菜の天ぷらに近い感覚かも。

で、私のように天ぷらタイプにする人、
花をバラして衣に混ぜてお団子状に揚げる人、
衣を甘くしてお菓子として食べる人、いろいろあり。

それから揚げる以外にも、
アカシアのリキュール、
りんごと一緒に煮込んだアカシアのジャム、
なんていうレシピも出てきた。

ところで私は今、アカシア、アカシアと書いているが、
調べてみると、私がフリットにして食べたのは
実はアカシアではなくて、「ニセアカシア」と呼ばれる、
アカシアと似て非なる植物の花なんだって!

イタリア語名ロビニーナRobinia。
学名はRobinia Pseudoacacia。
なんでニセかというと
葉っぱの形が似ているからということらしい。
北米が原産で、フランスの王様・アンリ4世に使えた
植物学者のジャン・ロビンという人が1601年にパリに持ち込み、
そしてあっという間にヨーロッパに広まった。
今もパリで一番古い街路樹と呼ばれ、親しまれているそうだ。
日本には1873年に渡来、とwikipediaには書いてある。

    みんなが「アカシア」と思っている、実はニセアカシアの花。

それで日本でも、イタリアでも、世界中で、
「アカシア」と一般的に思われているのは
「ニセアカシア」の白い花、ということ。
ハチミツも、いろんな歌に出てくる「アカシア」も、
私が20年前に食べて感動したのも、
先日自分で摘んできて天ぷらにしたのも、
みんなニセアカシアなのだ。

じゃあ、本物のアカシアって? というと、
ミモザケーキのあの、黄色くて丸い
ふわふわした、あの花なんだそうだ。
正確にはアカシアという植物は世界に約1300種類もあって、
ミモザはその1種だそうで、
しかも正確にはミモザという植物はなくて…と、
読めば読むほど頭がごちゃごちゃになる
お騒がせな天ぷらのお話なのでありました。

この方のブログを読むと、アカシア、ニセアカシア、ミモザの
違いがわかります。



「ニセアカシアの天ぷらの作り方」

1 ニセアカシアの花は朝早く摘むこと。日中になると花が開き、中に虫が入ることがあるから。枝には棘があるので注意する。
2 天ぷらの衣を作る。冷たく冷やした卵、冷水、薄力粉(できれば粉も冷たくして)をざっと混ぜ合わせ、好みの濃度の衣を作る。
3 ニセアカシアの花は一つづつバラして衣に混ぜ込むか、房ごと衣にくぐらせるかして揚げる。
植物オイルを170度に熱したところへ入れて30秒ほど、衣がカラリと揚がればできあがり。
4 塩とアカシアの蜂蜜を添えて。




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