ピークとデマと、そして緩みと 続・コロナウィルス4

去年の秋、友達と泊まったミラノ、ドゥオーモ至近のB&Bの窓から

コロナウィルスの感染拡大が始まった初期には
頼り甲斐のあるスピーチで国民の心を掴んだ
イタリアのコンテ首相も、
ロックダウン生活が1ヶ月以上になった今、
いったい、いつになったら
経済活動を再開するんだ? 
病気で死ぬか、飢え死にするか?と攻められる一方で
疾病対策の専門家委員会からは
再開のタイミングを早まれば、
もう一度パンデミックに陥ると
警告されるという板挟み。

イタリア中が今、フェーズ2、
つまりロックダウン後の生活に心を寄せている。


4月4日(土曜日)

感染がピークに達したといって、油断して
出かける人が増えているという。
ジェノバで、ナポリで、ボローニャで、
商店街や市場での人混みを写したニュース。

迂闊に出歩いている人たちのせいでまた感染者が増えて、
ロックダウン生活が長引けば、
ますます経済の疲弊が心配、という声が
FBやツイッターなど、あちこちから聞こえてくる。
確かにその通りだ。
比較的引きこもり生活もそんなに辛くない私でも、
誰にも会わず、何もしないこんな生活、
いつまでもやってられない。
だらだらと外出禁止、経済活動ストップの状態が
続けば、感染症の被害は免れても
別の恐ろしいことが待っている、というのは
誰にでも想像がつく。

テレビではイタリアの政治家たちが毎日のように
「ピークに達したとはいえ、ワクチンが開発されるまでは
今までと同じ暮らしができると思わないほうがいい。
今油断して、規制を緩めたら
今までの苦労(外出規制など)が水の泡だ』
と口を酸っぱくして言っているけど、
天気が一気に春めいて来たイタリアで、
1ヶ月の軟禁生活にうんざりしているイタリア人が
爆発しないか、とても心配だ。
なんたってイタリア人は、外に出るのが
ことのほか好きな人たち。
例えばレストランやカフェの席を決めるときも、
多少寒くても道路沿いで排気ガスまみれでも、
外の席を好む人が圧倒的に多いように思う。

来週は復活祭。
イタリア人にとって、特に北イタリア人にとっては
長い冬が終わり、楽しい夏の始まりを象徴する日。


ベネチアの夕暮れ

4月5日(日曜日)

ロックダウン以来、もう1ヶ月近く会えないでいる
ボーイフレンドの誕生日にせめてプレゼントを贈りたいと、
数日前から私に特訓を受けて作ったチーズケーキと、
アマゾンで買ったプレゼントを
タクシーの人に託して彼の家に届ける娘。
タクシー代も自分のお小遣いで払う。

一人っ子だから甘やかし過ぎたのか、
19際にもなって、家のことも全然手伝わず、
好き勝手に暮らしていた彼女も、
この異常事態に自分のこと、人生のことなど考えるところがあったのか
少し大人っぽくなったように見える。
家の掃除や、食事の支度など、
頼まなくても分担してくれたり、
私とお茶を飲んで一緒に過ごしたり。
私以外、話し相手がいないんだから
しょうがなく? という気もするけど。

この前は、夫の、伸びきった髪を散髪してあげていた。
いつもは、パパやだー、と近づきもしないのに。

                 タクシーに乗せて、揺れないように持っていてくれる人がいないから
                 デコレーションは諦めたシンプルなチーズケーキ。不恰好なのはご愛嬌。

コロナは辛いけど、いろいろな気づきがあったり
悪いことばかりじゃない。
深刻化していた環境問題が、
ロックダウンのおかげで劇的に改善したのもその一つ。
車は動かず、工業もストップしているせいで
ヴェネチアの運河がきれいになった、
トリエステ(イタリア北東部、スロベニア国境に接する
フリウリーヴェネチア・ジューリア州の州都)の海にイルカが現れた、
なんていうニュースも登場。
インド北部の町では、200キロも離れた
ヒマラヤが見えたなんていう話も。


4月7日(火曜日)

もはやコロナウィルスはイタリアだけの問題じゃなくなったせいか、
日本の報道もコロナ情報で白熱し、混乱気味?
イタリアの状況に関する報道では、
え? そうなの? と私たち在住組が
驚いてしまうこともたくさん。

日本政府がマスク2枚とお肉券だと言って
非難ごうごうだった数日前には、
世界の他の国は政府が国民にこんなにしてくれる、
日本と比べるとこんなに立派だよ! という
リストのようなものがSNSに登場した。
そこには「イタリアは国民全員に30万円」とある。
えー? そんなこと、全然聞いてないよ???
(実際、そんな話はなかった)

この前は、日本の某大手出版社系のwebサイトで
「イタリアは週に一回しか買い物に行けないよう規制」
→週に一回しか行かないようにしている人が多いというだけで
特に回数までは決められていない。
「イタリアの外出規制は5月16日まで延期された」
→5月16日ぐらいになるかもしれないという
政府のコメントが以前あっただけで、その時点では4月3日までだった。

なーんていう怪しい報道も。

実際には、3月の収入が減った個人事業主やフリーランスには
600ユーロの補助が決まった。日本円にして7万5000円ぐらい。
ひどい、少ない、ドイツやフランスを見ろ!と
文句を言うイタリア人は多いけど、
もともとあちらはお金持ちの国なんだから
比べたってしょうがないのでは?
でも、その受付開始日に申し込みが殺到してコンピュータが
あっという間にダウンしたという。さすがイタリア。笑

一方ドイツで音楽家をする友人の話では、
ベルリン州では自営業、フリーの芸術家など
申し込んだ人全員に5000ユーロが支払われたという。
しかも申し込みをして24時間以内に入金という素晴らしさ。
ただしこの5000ユーロで3ヶ月はやりくりしてね、
ということ、そしてもともとそれ以下の収入だった人は
あとで税金として差し引きされるという。
でも収入証明をしたり、条件をグズグズ言わず、
とにかく先ずは補助金を、という点に集中した
素晴らしい政治判断だったということらしい。

 トリノ・王宮広場にあるマダマ宮殿は世界遺産の一つ

4月10日(金曜日)

日曜日の復活祭、月曜日のイースター・マンデーに向けて、
外出する人が激増しそうという予想に
政府はピリピリ。イタリアの人は、
お金持ちも、それほどでない人も
海や山に別荘を持っている人がけっこういる。
お金持ちは豪華な別荘を、
それほどでもない人も海や山に
小さなマンションをもう一軒持っている、
戦後にコツコツ働いて買った両親から譲り受けた、
そんな感じの人が多いんだと思う。

復活祭の連休にも、
別荘で過ごそうと移動する人が増えることを
政府は警戒しているというわけ。
自分の家に行くだけならいいじゃん、とも
思うのけど、別荘のある街で
買い物したりしてウィルスを持ち込んではいかん!ということ。

それで明日の土曜日から月曜日まで
外出の言い訳ができないように
スーパー、食料品店も閉めるとのこと。
急いで買い物に出かける。


4月12日(日曜日)

            復活祭に食べるケーキ「コロンバ」。
                   平和のシンボル鳩(イタリア語でコロンバ)の形をした
                   発酵生地にオレンジピールがたっぷり

復活祭の今日は、仔羊の肉を食べるのが習わし。
キリスト教徒にとっては、クリスマスと並ぶ大切な日。
仔羊や卵を使ったご馳走を食べるのが習わしで、
いつもなら数日前から肉屋さんに予約をして買い出し、
ご馳走を作って家族で食べる。
今年だって肉屋さんも、こだわり食品店も営業しているから
そうしようと思えばできたけど、
なんだかあちこち買い出しに行く気にはなれなくて、
スーパーで買った材料で普通のお昼ご飯。
天気のいい日に、家族で一緒に食べられるだけでいいよね、
なんて柄にもなく真摯な気持ちになったりして。

パレルモでは建物の屋上で、友達を集めてバーベキュー
パーティーをした人たちがいた。
屋上なら誰にもバレないと思ったのか? 
ドローンとヘリで見回っていた警察に見つかって
しまったという間抜けなニュース。

      パレルモで食べたウニのスパゲティ。また食べに行きたい!

ほとんどのイタリア人たちは真面目に政府の言うことを聞いて
我慢しているけど、いい加減な奴が多い、
規則を守らない奴が多いのがイタリア人の悪いところだ!
と電話をかけてきて怒りをぶちまけるイタリア人の友達。

彼曰く、フランスでは外出規制を破って出かける人は
罰金はその場で支払わなければ車を押収されるのだとか。
現金持っていないなら、近くのATMでお金をおろして来なさい、と言うらしい。
イタリアは罰金の紙をもらうだけで、
この混乱に乗じて支払うつもりなんかない輩が
規則を破っているんだと言う。
たしかに、毎日1万人ほどが罰金を受けている。
この仕事がない時に、最低でも400ユーロというのは
かなり痛い出費だろうに?

感染がピークに達したと言っても、まだ毎日500人前後の人が亡くなり、
各地の老人ホームでは集団感染が起こって
何十人もの死亡が隠匿されたとか、
恐ろしいニュースを間近で見ても
まだ自分には関係ないと思っていられるって、
ある意味すごい。

ロックダウンが5月3日まで延長決定というニュース。
3月12日から全国がロックダウンになってから、
3月25日、4月3日、4月13日と延長されてきた。
これで4回目の延長。本当に次で終わりになるのかな?


4月13日(月曜日)

今日は、イタリアではパスクエッタ。
英語でイースター・マンデー。

パスクエッタは友達などとピクニックやバーベキューをして
外で楽しむというのがお決まりのイタリア。
今年はそれもなし。
でも、規則を破って外出、別荘に移動して罰金を受けた人、
なんと1万4千人。
100人が刑罰、うち19 人はなんと陽性患者だったという。


個人事業主、フリーランスに600ユーロのボーナスを支払うという
「イタリア・ケア」措置で、
最初の100万人がお金を受け取ったというニュース。
他のヨーロッパ諸国に比べたら少ないけど、
ないよりはマシ。
いつも支払いがとても遅いイタリアにしては
頑張った。4月は800ユーロだそうだ。

とはいえ、ロックダウンがこのまま続けば、
経済はどんどん危うくなって行く。
特に外食産業は、解除が一番最後になると予想されていて、
それまで経営が持たないところが出てくるのでは?と
心配の声が上がっている。
家賃の60%は国が補助してくれたり、
ローンの支払い一時停止措置などあるけれど、
ロックダウンの期間中に従業員のリストラは認められないという法もあって、
経営者にとっても収入ゼロのまま何ヶ月もは辛すぎる。


昨日は死者数が431人と、3月19日以来の少なさ(!)ということだったのに、
今日はまた566人と増加してしまい、ついにイタリアの死者数は
2万人を超えた。合計2万465人。
新規入院者も増加して感染者数は合計28,023人。
ただし新しく感染した人、ICUの入院患者は
毎日減少していて、これは
「ピークに達したと言える。ただし超えてはいない」と
市民保護局のコメント。
ピークを超えて、坂を下って、ゼロになるのは
いったいいつなんだろう?

 トリノの街のチョコレートショップ。復活祭の季節には、凝ったデコレーションのイースターエッグがショーウィンドウを飾る。


4月15日(水曜日)

オックスフォード大学と共同で、ラツィオ州(州都ローマ)の
製薬会社がワクチンを開発中、9月には医療従事者などに接種開始
できるかも? という報道。本当だったらすごいけど、
そんなに早く開発できるわけない、と疑問視する声も。

一方で、ハーバード大学のシミュレーションによると、
隔離政策は2022年まで、緩めたり、厳しくしたりしながら
続けることになるだろうという予想。ワクチンも治療薬もないまま
ロックダウンを解除すると仮定すると、コロナウィルスは2025年まで、
季節ごとに繰り返されるだろう、という嫌なニュースも。

フェーズ2、つまりロックダウン解除後の
世の中はどうなっていくんだろう?
今までと同じように海でバカンスをしたり、
海外旅行を楽しんだりできるんだろうか?
レストランやバーで、安心して集まって食べて飲んでなんて
できるんだろうか?

ロックダウンが始まったのは3月12日、まだ寒い時期だった。
気がつけば今はもう、日中は暑いぐらいの天気。
セーターやコートを洗ってしまいたいのに
クリーニング店も閉まっているから
それもなかなか進まない。

 ミラノ・ドゥオーモ。冒頭の写真と同じ場所から撮った夜景。

  












コメント

  1. こんにちは。
    現地の様子や空気感が伝わる情報にいつも引き込まれています。大好きなヨーロッパが大変なことになってしまって、とても心を痛めています。
    20年前にナポリ~ローマ~ヴェネチア~ニースと旅行しました。陽気なナポリのユースホステルの食堂のおじさん。バスのチケットの買い方が分からなかったときに、自分のチケットを1枚分けてくれた女の子。名前も知らないけれど、今まで出会ったすてきなイタリアの人々を思い出して、つらいです。
    いつか息子と二人で旅行したいと思っていたヨーロッパ。息子が5年生になった今年の夏休みはチャンスと思って、昨年から計画していたのですが、どうやら無理そうです。日本も、明日から全国に緊急事態宣言が出されるようです。日本もイタリアも早くこの騒動が収まって、人々が自由に旅行できる世界が取り戻せますように祈っています。

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    1. こんにちは。読んでくださっていて、ありがとうございます。いい加減だったり、仕事しないなんて悪口言われることも多いイタリアで、今回の対処の仕方もドイツなどの国に比べたら落ち度があるかもしれないけど、陽気で優しい彼らが、無事で、また楽しい暮らしに戻れるのを祈りたいですね。そしてここに暮らす私たち日本人も、日本の皆さんも、みんなが無事で自由に世界を旅できる日が戻って来ますように。息子さんと安心してイタリアに遊びに来てくださる日が早く実現しますように!

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  2. ブログ更新ありがとうございます。雰囲気が伝わってきて素晴らしいと思います。

    >受付開始日に申し込みが殺到してコンピュータがあっという間にダウンした

    アメリカ(フロリダ州)でも似たような話聞きましたね。失業保険の申請で。
    どうやら、1980~90年代に早くから役所のIT化を進めていた所ほどそういう事態になっていて、処理がなかなか進まない模様。窓口も激混みしているとか。
    知人曰く、3週間前に申請したのに未だに「保留中」だそうです。
    レガシーシステムの刷新をしていた自治体はまだサーバーが耐えているとも聞きます。
    自治体間で格差が出ていますね。けど、連邦政府がとにかく巨額400兆ドル規模(来月には総額600兆ドルになるかも?)の真水(財政支出)を出しているというのは「先が見えている」からまだ耐えられると語っていました。
    フロリダ州の事しか聞いていないので、他州はまた違うと思いますが。

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    1. SBT様、こんにちは。いつもありがとうございます。フロリダにお住まいなのですか? 素敵ですね。そちらはどんな状況でしょう? イタリアも、新しいことにすぐ飛びつくのが意外と好きなので、早くにIT化を進めて、古くなったシステムを使い続けているのかもしれません。それにしても、お友達がおっしゃる通り、手元にはまだ届かなくても、「先が見える」「希望がある」ことって大事ですよね。

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  3. さらちゃんにfidanzato!!、と衝撃を受けましたが、19歳なら当然ですね(笑)。いつのまにか大きくなっていて、、、というか、自分が年を取っていたんですねぇ。「宅配」タクシー運転手さんが、道中美味しそうなチーズケーキを味見しなかったか心配です。

    緊急事態宣言が出てからは、仕事を除いては、外出は銀行やスーパーに行くくらいです。私は牛乳の消費が多いので、最低でも2日に一度は買いに行っています。イタリアみたいにロングライフのパック牛乳があったらいいのに、、、と思います。

    子供さんの学校がなく、お昼もみんな家で食べる人が多いからか、パスタやトマトソースが売れていて、スーパーの棚は8-9割空状態です。

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    1. Yuriさん、ゆりさん? コメント気がつかなくて、返信いまになってしまいました。ごめんなさい! 日本もイタリアも、少し落ち着いてきたようだけど、元気ですか?

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