続・コロナウィルス1

  トリノ郊外に住む私の家の庭は春満開で、外で起きている大変なことが嘘のような錯覚に陥りそうだ。


3月19日(木曜日)

バルコニーに出てみんなでイタリア国歌を歌ったり、
思い思いのパフォーマンスをして(中にはプロのオペラ歌手なども!)、
外出できない鬱憤や、コロナウィルスの恐怖を跳ね飛ばそうという
フラッシュモブの流れ。

#restaacasa(resta a casa) =家にいなさい
# stoacasa(sto a casa)=私は家にいる
#andratuttobene(andrà' tutto bene)=きっとすべてうまくいくよ

こんなハッシュタグのついた画像や動画がSNSに溢れかえった。
イタリア全国民が団結して戦っているような、
ちょっと盛り上がった気分が蔓延していた。



ところが、昨夜18日に流れたベルガモのニュース。
遺体を埋葬するスペースがなくて、軍のトラックが
別の地域へ移送しているというニュースは、
そんな、ほんの少しだけ浮ついた気分に、冷水を浴びせかけた。

そして今夜18時、コロナウィルスによる新たな死亡者数427人という
イタリア市民保護局の発表。
合計3.405人。中国の数字を抜いてしまった。感染者総数は33.190人。

ロンバルディア州の一番大変な地域の人々から、
歌うのは勝手だけれど、私たちがどんな状況にいるのか
想像して欲しいというメッセージや、
亡くなっていく人々とその家族への追悼とリスペクトから
お祭り騒ぎはやめようという声が上がり始める。

そしてフラッシュモブは姿を消した。


3月20日(金曜日)

犬の散歩は許されているから、朝、グレースを連れて近くの大きな公園に行くと、
偶然、犬友達のティツィアーナに会えた。彼女は大の日本びいきで、
飼い犬は秋田犬のメス、さゆりさん。
久しぶりに会った仲良しのグレースとさゆりは、嬉しそうに身体をぶつけ合って
走り回るが、私たち人間は2メートルほど離れ、
自治体警察の見回り車が回ってこないか、ドキドキしながら歩く。
そういえば、最近、犬を捨てる人が増えているという。

ペットにも感染の危険があるというニュースが流れたせいなんだけど、
全くひどい人がいるもんだ。
明確なエビデンスはないので捨てないように!
という市民保護局の声明が先日出たばかりだ。

グレースとさゆりは幸せだね。


                我が家の庭で。左がさゆりさん。


15日もの間、集中治療室で人工呼吸器に繋がれていたティツィアーナの義理兄が、
やっと回復の兆しを見せているという。
それにしても15日って、本当に長い。
義理兄は49歳。若くても糖尿病や呼吸疾患がある人が感染すると

重症化するというので、彼は既往症があったの? と聞くと
「Sanissimo!(健康そのものよ」という答え。
治療薬がないので、対処療法をして身体がウィルスに打ち勝つのを
待つしかないから、とても時間がかかるんだとティツィアーナ。
その間、面会ができないだけでなく、
1日一回、病棟スタッフからの電話連絡も、日に日に途絶えがちになったのだそう。
重症患者の処置に追われて、電話対応をする余裕がないのだろう
彼の奥さんも、年老いた両親も、ただ家で心配して待つしかできない、
電話の音に怯える日々を送っていたそうだ。

そういえば昨日、ベルガモで97歳の男性が回復したというニュースもあった。
明るい話題と、公園を散歩して上向きになっていた気分は、
けれどまたもや18時のニュースで打ち砕かれた。
今日1日で627人の死者。なんなの、この数字は??

3月21日(土曜日)

医療スタッフが足りなくて、国家試験を受ける前の医学生も緊急採用したり、
イタリア全土の、まだ余裕がある州からロンバルディアへ
医師が集まってきているという。
コロナウィルス感染者以外の病人、怪我人だって病院にはやってくる。
猫の手も借りたいとは、本当にこういう状態を言うのだろう。

昨日のニュースでは、引退した73歳の医師が一線に復帰した結果自身も感染し、
そして亡くなってしまったという悲惨なニュースも。

ヴァッレ・ダオスタ州(州都・アオスタ)では
医療スタッフの防護服が足りなく、
ビニールのゴミ袋を被って働いているそうだ。
あの2月22日から25日のスキーバカンス週間に、
私たち家族も行っていたスキー場には、
たくさんのロンバルディア人も来ていたけど、
定宿のおじさんは元気にしているだろうか?

娘の幼馴染のお父さんは、トリノ市内の大きな病院の内科部長で、
偉ぶらず、有能で、医者としても友達としても、とても素晴らしい人だ。
その彼も、家族に感染させる危険があるから、
もう1週間以上、自宅には帰って来られないそうだ。

それにしても、これほど大変なことになっているのに、
まだ、自分には関係ないとか、市民の自由侵害だなんて言って
不用な外出をしたり、集まったりしている人が絶えないらしい。
体制に反対したい若者はいつの時代でもいるものだけど、
外出できずに退屈だからって、1日に何回もスーパーに買い物へ
出かけていく大人気ない人が大勢いるという。
3日前の記事で、不要に外出していると罰金などを受けた人53.000人。
昨日だけで新たに11.000人。

(罰金といってもお金を払って帳消しになる刑とは違い、
人の命を危険にさらした罪として犯罪記録が残る罰金刑)


そんな人々のせいで、ローマではついに軍が出動し、
人々の動きを監視することになったという嫌な話。
また別のところでは、ドローンで人を監視するとか
効果的に感染拡大を抑えられた韓国方式を取り入れ、
陽性者をGPSやクレジットカードの利用履歴などから
徹底的に追跡するなどのニュースが飛び交っている。

そしてついに、公園は禁止、ジョギングも禁止。犬の散歩は自宅から
200メートル半径内ですること、となる
これらはすべて、陽性でも無症状の人が
感染力を持っているから、気づかないうちに感染を広げてしまう、
それを防ぐためなのだから、
我慢するしかない。

18時を過ぎて、今日の感染状況が発表される時間になった。
見たくない、怖いなあ、と思って躊躇していたら
スマホのニュースアプリが鳴ってしまった。

今日1日の感染者数4821人、死亡者数 793人。
トータル感染者数42.681人、死亡者数4.825人、
回復者数 6.072人。

RESTIAMO A CASA(家にいましょう)

*一部写真を削除しました。

コメント

  1. はじめまして。
    よくまとまっていて読みやすいです。
    イタリアの事は何も分からないので助かります。

    >引退した73歳の医師が一線に復帰した結果自身も感染し、そして亡くなってしまった

    これは紛うことなき悲劇ですね…

    返信削除
    返信
    1. ありがとうございます。イタリア人も、私たち外国人も、イタリア中がのんびりしていたのに、あっという間に感染が広がって、悲劇があちこちで起きています。

      削除
  2. イタリアの現状を教えてくださりありがとうございます。
    日本のニュースではここまでリアルな報告はありませんし、実際のお話をうかがうと、とても苦しく悲しみが溢れてきます。
    日本もまだまだ油断はできませんが、イタリアの皆さまの回復をお祈りしております。

    返信削除
    返信
    1. ありがとうございます。私も外国人ながら自分が暮らすイタリアと、イタリアの人たちの幸せと健康が戻ってくるように祈っています。

      削除
  3. 本当に悲しく現実味のある文章で他人事では無いと思い知らされます。
    世界で早期の収束する事を祈ります

    返信削除
    返信
    1. ありがとうございます。もはやイタリアだけでなくヨーロッパ中や北米も大変なことになっていますね。早く終息しますように。日本の皆さんも気をつけてお過ごしください。

      削除
  4. 家にいましょうと宣伝しながら犬の散歩は(制限はあれど)許されているのですね。不思議です。兎に角、これ以上感染拡大しないよう祈るばかりです…

    返信削除
    返信
    1. ありがとうございます。犬の散歩の件、説明が足りなかったですね。イタリアでは室内飼いが一般的なので、散歩に連れ出して排泄させてあげる必要がありますし、犬だって運動させなければ体調を崩したり、問題があるということだと思います(ただし、家族といえども複数で出かけてはだめ)。それで庭のある人たちも、犬を理由に散歩に出ていたのですが、今日からは自宅から200メートル範囲内のみ可能と、さらに厳しくなりました。

      削除
  5. はじめまして、語弊がありますが大変引き込まれる文章で、現実にイタリアで起きていることをお住まいの方の目を通して見ることができました。
    私は今セルビア在住なのですが、こちらでも日に日に感染者が増え、外出禁止や各店舗の営業停止などの措置がどんどん厳格化しています(そしてセルビア人もなかなか隔離を守らない人が多いようで……)。
    欧州のみならず世界中が大変な事態ですが、どうか落ち着くことを願ってやみません。

    返信削除
    返信
    1. Slvskiさん、ありがとうございます。セルビアも感染が増えているのですね。政府が号令をかけたらパッと守る日本とは違い、欧米ではなかなか大変ですね。セルビアも感染がひどくなりませんように。

      削除
  6. はじめました。淡々と描かれている日常が壊れていく昨日までの世界を読む人に印象付けます。イタリアの悲惨な状況、途中まではGIORNALEが政権批判のために誇張していたのではないか、という見方もあったのですが現実が先を行ってしまったようです。あなたのブログは一部日本のSNSでリンクされています。
    これからも無理のない範囲でそちらの情報を流していただければ幸甚です。

    返信削除
    返信
    1. はじめまして、読んでくださってありがとうございます。そうですね、そういう声も流れていましたね。できるだけ続けて書いてみたいと思っています。

      削除
  7. はじめまして。
    私はイタリアが大好きで数年に一度、1〜2週間ほど掛けて旅をしています。
    今年になってそろそろ行きたいなと思ってた矢先にこの状態。
    「旅行に行けない。詰まらない」とどこか他人行儀でしたが、毎日ニュースを観ていると瞬く間に酷いことになってると、今や胸が締め付けられる思いです。
    そして今日、貴方の文章を拝読してその思いは益々強くなりました。

    シチリアやローマで出逢った、おじさんやお爺ちゃんは達者にしているのかとても心配です。
    何もしてあげられなくて歯がゆいですが、一刻も早くあの陽気な賑わいが戻ってくることを念じています。

    返信削除
    返信
    1. はじめまして。私たちは家にこもって我慢の毎日ですが、連絡を取れるほど親しくないけれど、今まで関わりのあったおじいちゃん、おばあちゃんたちが心配、という気持ち、本当に同じで、よくわかります。陽気で明るく、美しいイタリアに戻って、またJulyさんが旅行を楽しめる日が早く来ることを祈るばかりです。

      削除
  8. はじまして、お隣フランスに住んでいます。数日か数週間遅れでイタリアとまったく同じ道を辿っているフランスも、先週まではまだ危機感の足りない人が多く見え困惑しました。自宅待機を厳守して一日も早く収束することを祈っています。頑張ってください。

    返信削除
    返信
    1. はじめまして。あっという間にヨーロッパ中が大変なことになって、どうなってしまうのだろうと胸が痛くなります。イタリアも、こんなになってもまだ、無用の外出をしてしまう人が減らないようですよ。お互いに気をつけて、のりきりましょう。

      削除
  9. はじめまして
    順を追って拝読しました。
    こちらの感覚で言えば、現在の日本はイタリアの3月7日ごろに該当するのかな、と思います。
    「がんばれ! イタリア!」としか言えません。
    一刻も早く、この事態が終息することをお祈りしております。

    返信削除
    返信
    1. はじめまして。読んでくださって、そしてイタリアを応援してくださってありがとうございます。日本はそんな状況なのですね。これ以上ひどくならないことを願っています。

      削除
  10. 初めまして。TwitterでMadaminさんのブログを知りました。イタリアの1日も早い収束を心から願うばかりです。
    日本ではイタリアの現況として感染者数や死亡者数を知ることはできていました。が、
    たった数日、1日で変化するイタリアの様子を目の当たりにして、気が緩みつつある日本の現況に改めて危機感を抱きました。
    私も犬と暮らしているので、制限あるなかの苦労や不便をあれこれと想像してしまいます。だからこそ、グレースさんとのんびり気楽に散歩できる日が早く来ますように!!

    返信削除
    返信
    1. Mickyさん、はじめまして。読んでくださってありがとうございます。私自身も、あっという間に状況がどんどん変化して行くのに驚いています。外から見ていても、日本は感染が抑えられているようで、どうかそのまま終息してほしいと願っています。グレースは大好きな公園に行けなくなってしまいましたが、うちは郊外に住んでいるので小さな庭や、近所に森があって、散歩ができます。でもアパート(日本でいうマンション)に住んでいる人たちは、本当に大変だと思います。応援ありがとうございます。

      削除
  11. はじめまして。カナダに住んでいる日本人です。時間をかけて読ませていただきました。本当に心が痛いです。カナダも最初はCOVID19について少し軽く見ていたと思います。しかし一気にCOVID19にかかる人が増えて、先週から国も深刻に考えはじめ、国境閉鎖、レストランやカフェもほぼ閉め、仕事も自宅でする人が増えてきました。公園や施設、図書館やプール、ジムもすべてしまっている状態で、今唯一行けるのがスーパーくらいです。私は仕事が休業となってしまい、家で過ごしています。昨夜、日本の友達と電話で話をしたのですが、彼女は日本は最初かなり深刻に考えていたけど最近また外に出歩く人も増えて、お店もどこも普通に空いているし国内旅行をしたり、買い物に行ったり以前のようにしていると。そして演劇、宝塚歌劇団やサーカスなども営業再開と聞きました。私は少し疑念を抱いています。まだ他国では苦しい状況で、人々が"Stay home"と呼びかけている中、日本の考えは少し甘すぎると思います。オリンピックについてもですが。自分だけの問題だけじゃなく、世界中のみんなが理解して助け合ってこそだと思います。10%の人が大丈夫だと思って普通に生活していれば、それが100%になり、COVID19にかかる人もまた増えます。まだまだこの先、落ち着くかも分かっていない中、日本の考えに対して少し怒りを感じます。そして、イタリアの皆さんには本当に申し訳無く思います。1日でも早くこのCOVID19がおさまってくれる日を願っています。どうかお身体にはお気を付けてください。そしてStay strong, stay safe, stay healthy. ごめんなさい、日本語が少し難しいもので、文章が意味不明なら申し訳ございません。私も出来る限り頑張りたいと思います。お互い頑張りましょうね!

    返信削除
    返信
    1. Saraさん、はじめまして。読んでくださって、そしてコメント、ありがとうございます。カナダもそんな状況なのですね。仕事もお休みで、どこへも行けないと本当に辛いですが、お互い頑張りましょう。そうですね、私も、日本は随分緩んでしまって、大丈夫かな、と心配になります。医療の専門家たちが、日本は医療が進んでいるし、病床もたくさんあるから、イタリアのように死者は出ない、と言っているのを読みましたが、死ななければいいということでもないのでは? と思います(もちろん、死んでしまうのと、感染しても回復できるのでは大きな違いがありますが)。Saraさんのように考えて、世界中で助け合える世の中になったら素敵ですね。昨日のニュースでは、ドイツとフランスが、病床の少ないイタリア北部ロンバルディア(一番大変なところ)の重症患者を数人受け入れてくれる、と言っていました。Saraさんもお気をつけて、1日も早く世界に平穏な暮らしが戻りますように。

      削除

コメントを投稿

人気の投稿